ロマーノ・レヴィを痛悼する

去る5月1日、イタリアの小さな村に住む、ロマーノ・レヴィという人が亡くなりました。
享年78歳。

ロマーノ・レヴィさんというのは、イタリア、ピエモンテにあるネイヴェという村で、父の作った蒸留所を17歳で継いで以来、ずっとグラッパを作り続けた職人であり、そのグラッパを収める瓶に貼られたラベルを1枚1枚手書きで描く芸術家だ。
彼の名声は広く世界に広がっている。蒸留酒に対する文化があまり成熟していない日本では、いわば「通の知る」ような職人に過ぎないから、この訃報もニュース配信されたのではなく、ヨーロッパと日本の洋酒バイヤーのネットワークから伝え聞いたものでしかない。

そのグラッパは味わい芳醇にして芳香強く、ぶどう果実の甘みを残すところなく封じ込めた濃厚さに、春の風のようにさわやかな香りがのって、口にするものを魅了する。
ラベルには朴訥とした筆で、花や太陽がこちらにむかって微笑んでいる。
おおよそこの世にある酒で、1本1本のラベルが違い、値段も2万~3万円台の高級酒の類に、入荷すればあっという間に売り切れてしまうようなことが、数十年も続いていた例はたぶん他ない。

そんなロマーノ・レヴィが、ついに亡くなってしまった。
そのグラッパを飲んでみればわかるよ、という文句は、やがて(たぶん早々に)使えなくなるんだな。

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