怖い世の中

ずいぶん前に、なんとなーく手にとって読んでみたけど、ちょっと読みづらくて、多少苦労しつつも何とか読みきって、忘れてた原潜迎撃という本。
先日ふと本屋でビレッジブックスの棚を見たら、続編が出てて、それが3作目だったのでおやまあと。
なら、2作目をとりあえず見てみようと思って、買ったのが2週間ほど前。深海の雷鳴というのがそれで、なかなか面白かった。
で、1週間ほど前に3作目の原潜、氷海に潜航せよを購入、先日読了した。
いわゆる軍事アクションというカテゴリーになるのかな。ものすごく近い未来の地球上で、差別主義的な思想によって2つの国家で政府が転覆、自分たちの帝国を作り出すために戦争を仕掛けはじめ、これに対抗するアメリカとイギリスがほとんどすべてを託すといっても過言ではない状況になったセラミック製の船体を持つ攻撃原潜チャレンジャーの活躍の物語。
ジョー・バフというこの本の作家は潜水艦の運用やら設計やらに関わってきたらしい人で、劇中でもそういった面での描写は微に入り細に渡る。また、近未来にありえる、戦術核による海中戦闘という状況の設定も、また深い洞察に基づく「ありえる脅威」と言える。
1作目ではウィルスン艦長のもと、SEALS(海軍特殊部隊)から潜水艦乗りになった特殊な経歴をもつ主人公ジェフリー・フラー副長が、艦内外で活躍しつつもどこか押さえつけられてもがいている感があって、話もなにか閉塞感をともなう感じがあったのだけど、2作目3作目と次第にヒーロー化するというか、潜水艦艦長の資質を身にまとっていくフラーの有り様が、なかなか奥深く感じさせられた。
毎回、原子力潜水艦という特殊なメインの舞台の「中」だけではなく、SEALSとともに敵と銃撃戦を繰り広げたり、何度も何度も畳み掛けるように必死の戦闘に突入したりする展開も作を重ねるごとに洗練されていくし、亡命海洋学者イルザ・レーベックとの押しちゃ引き引いちゃ押しの恋愛模様もイライラするし(笑)、サディスティックで手ごわい敵潜水艦艦長たちの描写もいい。
未訳の続作につながるだろう、世界が核兵器を構え合う戦争へと引きずり込まれていく様の恐ろしさもまたこの作品の重要なところで、容易にさえ想像できるし、ありえないと楽観視もできないその状況を、今現在ある状況と比べてみるに薄ら寒いものを感じることができる。
レッドオクトーバーとか、ああいう感じを期待すると損をするけど(笑)、これはこれでなかなかミシミシ船体が軋む感じがして、面白かったという感じ。

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