三沢光晴を弔す

吁嗟此轉蓬 居世何獨然
長去本根逝 夙夜無休閒
東西經七陌 南北越九阡
卒遇囘風起 吹我入雲閒
自謂終天路 忽然下沈淵
驚飆接我出 故歸彼中田
當南而更北 謂東而反西
宕宕當何依 忽亡而復存
飄颻周八澤 連翩歴五山
流轉無恆處 誰知吾苦艱
願爲中林草 秋隨野火燔
糜滅豈不痛 願與株荄連

嗚呼!ころがる蓬の草よ! この世でなぜ、おまえだけが独りなのだ
生まれた根から遠く離され 朝から晩まで、休む暇もない
東西に七つの道を飛びすぎたかと思えば 南北に九つの道を飛び越える
突然、旋風に巻き込まれ 雲の間に吹き上げられる
このまま天の路の終わりまで行くかと思えば たちまち深淵までまっ逆さま
今は疾風に吹き上げられて また田んぼに帰れるのかと思いきや
当然南に行くべきが、どんどん北に向かい 東に行くのかと思えば、逆に西に行ってしまう
この広漠たる空間のどこに身を寄せたらいいのか ふと消えうせたと思っても生きている
ひらひら飛んで八沢をまわり ふわふわ飛んで五山を巡ってきた
流転し定住の場所を持たない この私の苦しみを誰がわかってくれようか
できるなら林の中の草となって 秋に野火で焼かれたい
焼け滅びることは苦痛でないことはないが 兄弟たちと運命を共にするのが私の願いなのだ

(※Wikipediaから引用し、一部改変)
曹植子建の「吁嗟篇」という詩。曹植という人のまさに素の感情が表れた作品といわれているのだけど、三沢光晴という人は、この詩によく合っていると思う。
ジャイアント馬場という意思を、ジャンボ鶴田亡き後の世界に見出し、しかしその場から離れざるを得なかった。苦労に苦労を重ねて自らの団体を切り盛りながら、現役からは退かず一線にありつづけた。心はいつも生まれ故郷にありながら、帰ることができない身。
ついにその身を故郷に帰すことなく、路傍に横たえることになった。

嗚呼、ころがる蓬の草よ、三沢光晴よ。
今は安らかに眠れ。あなたの成し得なかった世界は、いつかあなたを知る者がきっと成す。

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