Rain Drop

[ Rain Drop ]
Rainという名のバーは、人知れずやっている。
街の片隅にあるそのバーのカウンターの中には、背が高くスリムでショートカットの女が一人。薄暗い店の中にはカウンターとスツールがいくつか。一人で切り盛りするのは無理ではないだろうが、少しだけ不釣合いな気がしないでもない。
ただ、その女は、つまりバーテンダーは、まるで店の風景に溶け込むように立っている。それだけは確かなことだ。凛として。


知っている人は知っていると思うけど、かつて日記猿人などをはじめとした日記サイト華やかなりしころ、故・菜摘ひかる氏の「風俗漂流記・肉筆通信」とともに私が毎日むさぼるように読んでいたのが、この「Rain Drop」だ。
今でも、ほぼ不定期というペースながら、ゆっくり筆を重ねている。
酒を飲むものには勉強にもなるし、ただの日記としても、ただの散文としても、楽しめる(ただし、少々シェイドの掛かった月明かりめいたところはあるが)。
虚とも実ともつかない語り口は、ニヒルでクールにつきる。どこかにそれを否定したいかのような雰囲気を漂わせはするものの、破綻させることはない。まるでチャンドラーのようだ。
私は、一介の酒飲みとして強く惹かれている。惹かれ続けている。この、誰もが知っていながら、誰もその内実を知らないバーテンダーに。この人のギムレットを飲めば、それさえ飲めばきっとわかることがある。すべてではないにしても、確実に何かを。私の酒飲みとしての勘、みたいなものだ。
それが叶うことはありそうもないが。

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