Imagine.

それなりにどんな仕事でも、ある程度精通してくればその概要を伝えられただけで全体の、あるいは詳細の像を想像することが可能になる。
先日訪れたバーで私は、連れに「モナリザ」という名のカクテルを飲ませてあげたくて、なんとかレシピを思い出そうとした。しかしこのレシピは数年前の米国で行われたカクテルコンペで入選しただけのものであるばかりでなく、そのレシピを元に1年以上前に私が、また別のバーのバーテンダーとともにアレンジを加え、日本人にも飲みやすいようにしたバージョンであり、その上、大概の場合、私はそれを酔っ払いながら試飲していたので、憶えていられなかったのだ。・・・少々言い訳が過ぎたようだ。
ともあれ、私は「シャルトリューズ」「オレンジビター」「オレンジジュース」というキーワードだけ伝えた。
白いバーコートに身を包んだバーテンダーは人懐こい笑顔で「ああ、ええ、わかります。イメージできます。」と応えた。
そのやりとりを見て、連れは甚く感激し、バーテンダーってすごいのね、などと言った。
確かにすごい。
結局、バーテンダー氏が作ったカクテルは、1年以上前に私が、別のバーで試飲していたものとほとんど変わらないものだった。
シャルトリューズ・ヴェールを10ml(バーテンダー氏はVIPを使った)。ジンを10ml(バーテンダー氏はウオッカを目測で少し入れた)。オレンジビターを10ml。オレンジジュースを30ml。
コリンズグラスに材料と氷を入れ、軽くステアしてからトニックウォーターで満たす(バーテンダー氏はクラブソーダにした)。
バーテンダー氏の「モナリザ」は少しドライで、でもアルコール度数が少し抑えられていた。あまり甘くもなく、シャルトリューズのハーブ香が刺激的で、かつオレンジのわかり易い酸味が気持ちよい。
ちょっと悔しいが、オリジナルや自分のアレンジ版よりもずっと美味しい。
しかし、やはり玄人には勝てないものなのだな、などと思いつつ、そしてバーテンダー氏に敬意を表しつつ、深酒に溺れた夜だった。

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