T.L.C.

「次はどうする?」と僕が聞くと、んーと口をすぼめて考えてから、彼女は「あなたはどうするの?同じのを頼んじゃおうかな。」と言った。
彼女のために、自分の飲みたいものではなく、彼女に合ったものを一緒に注文する。
彼女には彼女にあったものを、自分は自分の飲みたいものを注文する。
自分の飲みたいものを2つ注文し、彼女にも飲ませる。
まあ選択肢はいろいろあるだろうけど。
僕は彼女に「僕はウイスキーを飲むけど、それでもいいの?」と聞いた。「ストレートはちょっと無理ね。ウイスキーのカクテルでも頼もうかな」と彼女は言って、また悩んだような表情。
そんな彼女に「待って」といい、バーテンダーを呼ぶ。そして、ティーチャーズをダブルストレートで自分のために注文し、それから彼女にといって「T.L.C」を頼んだ。バーテンダーはにっこりと笑って「かしこまりました」と言って仕事にかかった。
「T.L.C?」
彼女は怪訝そうな顔。
「優しく、気をつけて愛しておくれ。Tender, Loving Care.」僕が答えてにっこりと笑って見せると、彼女はぱっとバーテンダーに向かい「ねえ、これってどういうレシピ?」と聞いた。
バーテンダーは苦笑しながら
「スコッチウイスキーのティーチャーズに、ライムを絞って、コーラで割ります。」
と答えた。
出来上がったT.L.Cを一口飲んで、彼女は「うん、悪くないわ。あなたのジョークよりぜんぜん。」と言った。

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