マンハッタン・続

どこのバーに行っても、この話をすると関心してもらえる。いや、ある意味では身内の暴露話で、恥ずかしくもあるのだが。
母が定年退職になった年、東京の本社が定年退職者を集めて表彰したりなんかするとかいう豪勢なことをするとかで、わざわざ東京まで出てきたときのことだ。
聞いてるこちらがこっ恥ずかしくなるような東京観光コースを巡ったり、恵比寿やら赤坂やらで宴会をした後、最終日に自由時間があるから、宿泊しているホテルに来て一杯飲もうかという話になったのだ。
ホテルもホテル、お台場のとてもじゃないが僕なんかは寄り付くこともそうはないだろうと思われるようなこじゃれたホテルの最上階か何かにある、ラウンジバーだ。
適当に何か頼んでくれといわれて、母のウイスキー好きもあるからと、マンハッタンを頼んでやった。うまいねぇ、などといいながら、母は饒舌になり、そのこっ恥ずかしい観光コースの話とかし始めた。
そして、わずか1時間半の間に、母はマンハッタンを5杯お代りし、あんたも元気でやりなよ、と言い残して部屋に戻っていった。
60歳を迎えた年に、マンハッタンを5杯飲んでケロリとしている母を持って、幸せなのか不幸せなのか、ちょっと考え込みながら私は帰った。


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